CPQの製造業の事例を詳細にまとめました。
CPQは顧客要求に適した製品仕様から価格設定、見積書の作成などの一連の業務を支援するITソリューションとして注目されています。
本記事では製造業の代表的な事例を紹介し、CPQがいかに企業の営業効率化や顧客満足度の向上、DX推進に役立つかを解説します。
目次
B2B製造業向けのCPQに関するPDF資料
CPQシステムに関して以下のようなPDFがダウンロードできます。
CPQ(Configure,Price,Quote)とは?
CPQ(Configure, Price, Quote)は、Configure(仕様選定)、Price(価格算出)、Quote(見積作成)の頭文字をとった略称です。
CPQは、顧客要求に適した製品仕様を作成し、製品仕様に対して一定ルールに基づき価格を設定した上で、見積書や仕様書の作成までの一連の業務プロセスを支援するシステムです。
CPQには「製品仕様の確定」、「正確な価格計算」、「見積書の自動作成・管理」などの機能が備わっており、「営業の即戦力化」「見積もりの透明性や品質向上」「契約までのリードタイム短縮」などの効果が期待できます。
営業力強化や受注プロセス変革を目的としています。
CPQの導入背景
従来、日本の製造業では属人性の高い「対面営業」を重視してきましたが、見積作成の業務で様々な問題が生じていました。
例えば、設計や生産部署への問い合わせによる見積回答の遅れや、標準仕様から外れた特注要求への見積もり対応、営業の属人的な判断による不備、手作業による見積書作成の煩雑さなどがあげられます。
さらに営業の人材不足も問題に拍車をかけています。
日本の製造業が個別の顧客要求に時間をかけて対応する受注スタイルを変革できない一方で、グローバル市場では「製品仕様の標準化」やマーケティングやセールス領域での「IT化の促進」によって効率化が進んでいます。
日本の製造業が世界でビジネス展開していくには、この古くから続く営業スタイルや販売モデル改革の遅れが課題となっています。
また、製造業では生産性向上のために「生産現場の効率化」が進められてきましたが、現場での改革は限界に達しつつあります。
企業が売り上げや利益を拡大しさらなる成長と競争優位性を獲得するには、新規販路の開拓や販売チャネルにデジタルツールを活用して、「DX(デジタルトランスフォーメーション)」を推進していく必要があります。
このような背景から、CPQ導入の必要性が高まっているのです。
CPQの製造業の業種別事例
ここで、製造業でCPQを活用している事例を業種別に紹介します。
■ 電機・電子
横河電機では、グローバル市場での事業拡大を支える全社改革の一環として、標準品の組み合わせによる受注方式を採用し、従来の「すり合わせ型製品」から「組み合わせ型製品」への変革に取り組んでいます。
同社は製品を構成するユニットレベルまで分解し、これらを組み合わせた際の特性を管理する「組み合わせ製品」の考え方を導入しました。
また、顧客の要求仕様を入力することで、適切な製品の組み合わせを自動で選定する「セールスコンフィギュレーター」を構築しています。
このセールスコンフィギュレーターにより、営業担当者は技術者に問い合わせることなく、標準品の組み合わせで顧客要求に対応できるかを判断できるようになりました。
導入効果として、「特注対応の比率低減」「オーダー品質の向上」「リードタイム短縮」などを実現しています。
さらに、製品の組み合わせによる新たな価値提案を通じて、今後はソリューション型ビジネスへの展開も視野に入れています。
ドイツの大手テクノロジー企業であるシーメンスは、産業用モーターの提案書作成業務の自動化と即時化を実現するために、CPQを導入しました。
同社の産業用モーターは顧客ごとにカスタムした仕様となるため、提案時には「モーター性能」、「データシート」、「新規設計部品などのCAD図面」、「見積書」などの書類作成に膨大な時間を要していました。
シーメンスはCPQを導入することで、見積や提案作成に要する時間を「約4〜6週間」から「1時間以内」へと大幅に削減しました。
高性能なコンフィグレーターにより、生産可能なすべての製品構成を正確に計算する見積と受注システムを構築しています。
また、CPQとERPシステムをシームレスに連携させることで、受注業務や生産指示の自動化も実現しました。
個々の技術者の知識をAIで獲得・実装することで、マスカスタマイゼーション化も進めています。
■ 産業機械
ブラザー工業
家庭用・工業用ミシンやプリンター、産業機械などを手がけるブラザー工業は、産業機器事業の営業現場において、いくつかの課題を抱えていました。
営業システムと製造システムが分断しており、業務負荷やリードタイムが大きく、ノウハウの属人化に伴うリスクもありました。
また、見積部品表と製造部品表がフィットしておらず、営業担当者にとって見積業務が難解となっていました。
そこでブラザー工業は、CPQを導入することで課題解決を図りました。
導入の目標として、「わかりやすく簡素化された正確な見積」「値引金額の表示方法の改善」「製造準備のリードタイム短縮」「スピーディーな意思決定」などを設定しました。
CPQの導入により、営業システムと製造システムの連携が実現し、営業と製造のシームレスな連携が可能になりました。
営業担当者は、製品構成が複雑な製品も間違いなく正確に見積もりできるようになり、見積もりの正確性が向上しています。
Fassi Gru(クレーン車メーカー)
イタリアのクレーン車メーカーFassi Gru社は、世界60カ国に及ぶ販売網を通じて、年間約1万台のオーダーメイドクレーンを製造しています。
同社の製品は60種類以上、30,000種類以上の構成が可能な非常に幅広いラインナップを持っており、要件を満たす製品コンフィギュレーターが必要とされていました。
Fassi社は世界中から受注する際、個別の注文書によるメールやFAXでの対応を行っていましたが、グローバル展開に伴い注文数が飛躍的に増加。
注文のフィルタリングや技術的な修正、生産計画レベルでの管理が課題となっていました。
そこで同社は、CPQを導入しました。
エラーの出ないコンフィギュレーションを実現するとともに、ERPシステムとの完全な統合や生産計画の改善、原材料所要量計画の迅速化に成功しました。
世界中から、24時間体制でコンフィギュレーションの受け取りが可能になり、業務効率が大幅に改善されました。
旭製作所
旭製作所は、ガラス製の理化学機器や実験装置の設計、製造、販売を手掛けており、国内シェア1位、世界シェア2位を誇っています。
同社が取り扱う製品は、中小型の理化学用ガラス製単品器具から大型ガラスプラントまで多岐にわたり、品目数も膨大です。
顧客からの依頼に対し、正確な見積もりや図面を迅速に提出することが困難であったため、失注のリスクを抱えていました。
この問題を解決すべく、旭製作所はCPQを導入しました。
新見積システムの導入により、自動作図システムを活用することで、お客さまとの打ち合わせの場において製品の3Dイメージ図面の提示が可能に。
パーツ同士の自動合致により、外形寸法図を提示できるようになりました。
さらに、これまで分散していた様々な製品の価格表が統一されたことで、価格の確認がすぐに行えるようになりました。
その結果、見積もり依頼から回答までに要する時間が大幅に短縮され、受注につながるケースが増えています。
■ 住宅
住宅設備を手掛けるLIXILは、リビング・ダイニング・キッチン(LDK)空間のデザインを3Dでシミュレーションできるウェブツール「LDKデザインシミュレーター」を提供しています。
利用者はあらかじめ用意された空間イメージや間取りから好みのものを選択し、ドアや床、キッチン、壁などの各パーツを、LIXILの商品の中から自由に組み合わせてカスタマイズ可能です。
3Dでリアルな質感を再現しているため、施工後のイメージを体感しながら理想のインテリアを検討できます。
完成した空間イメージは画像としてダウンロードできるほか、使用した商品の一覧をPDFで出力することも可能です。
シミュレーション結果に紐づく「保存番号」を発行して共有することで、家族やショールームのコーディネーター、施工業者などの関係者が同じ空間イメージを閲覧しながら打ち合わせを実施できます。
このLDKデザインシミュレーターは、エンドユーザーの理想的なLDK空間づくりを支援するとともに、関係者間の円滑なコミュニケーションに貢献しています。
導入事例集のダウンロード
まとめ
CPQは営業活動における一連の業務を支援し、製造業における「営業活動の効率化」と「属人化」の課題解決に大きく貢献します。
グローバル市場での競争が激化する中、日本の製造業がこれからの時代を生き抜くには、営業活動のDX推進が不可欠です。
CPQはその中核を担うソリューションであり、自社の強みを活かした活用方法を検討することが重要になります。
本記事で紹介した先進的な取り組み事例を参考に、CPQの活用方法を検討してみてはいかがでしょうか。
CPQを起点に「営業改革」や「販売モデル変革」に取り組み、自社の変革を推進していきましょう。
B2B製造業向けのCPQに関するPDF資料
CPQシステムに関して以下のようなPDFがダウンロードできます。
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